Y株、今年大当たり

この冬も多摩川河川敷に生えているヤナギの幹で越冬しているコムラサキ幼虫を観察している。これで3シーズン目になる。今年は冒頭の写真の株(数本の株立ち)でこれまでと少し変わったことが起きている。
多摩川の川筋に沿った河川敷にたくさんのヤナギが生えている。既に大木に育ったものから直径10㎝以下のものまでさまざまだ。その場所は、ちょっとした増水時にも根元まで水に洗われる位置にある。何年かに一度という台風などでの大増水時には根こそぎなぎ倒されるものもこれまでにはたくさんあった。コムラサキはそんなヤナギの中から幼虫の越冬に適した木を選んでいるようだ。
3年前最初のシーズンには10本近い一本立ちの株でそれぞれ10頭前後とまんべんなく越冬幼虫が見られた。2年目のシーズンにはそれらに加えて、それまで対象としていなかった少し離れた株(X株と名付けた)にかなりの密度で越冬幼虫が見られた(昨シーズンの約半分である50頭が)。そこで、今シーズンはX株を重点的に観察することを心待ちにしていた。しかし、この期待は見事に外されてしまった。今年はX株ではわずか数頭を数えるのみ。昨年のあの密度は何だったんだろうと、なぜ今年はX 株は敬遠されてしまったのだろうと首をひねった。
理由はわからないままで、偶然X株からほんの少し離れているヤナギを何気なく見てみたところ、ここではすぐに数頭が見つかった。そのヤナギは最も川の流れに近いところにあり、根元には昨年の増水時に流されてきたゴミが引っかかり泥が今だに堆積していて周りにはススキなど雑草もびっしり生えている。この株は直径10数cmの数本が株立ちになっている。その後、各幹を確認すると次々にたくさんの幼虫が見つかる。今年は参考にするつもりで、仮にY株と名付けて観察を始めた。しかし、足場が悪く、細い枝が微妙に重なり、各幹の様子を確認するのはなかなか骨が折れたが、昨年末の時点で既に40頭を超え、今年に入ってからも見るたびに頭数が増える。幼虫の擬態があまりに巧み過ぎて、おそらく何度見ても見落としがあったのだろう。そして1月末時点では、ついに63頭に達していた。その意味で、このY株は昨年のX株の大盛況を上回る大当たりとなり、X株での落胆を幾分取り返した気分だ。
ヤナギの木は成長が速い。成長に連れて幹にできる樹皮の割れ目の状態も変わっているようだ。あまり大きくなりすぎたヤナギは小さな幼虫の越冬には適さないのかもしれない。また、反対にあまりに若すぎる木にはまだ樹皮に十分に割れ目ができていないので、こちらも幼虫の越冬場所としては適さないようだ。夏場であれば、緑の葉さえ十分に茂っていればどの木でも大差はないと思うが、越冬幼虫になる卵を産み付ける場合には母蝶はヤナギの幹の状態も見ながら最も適した産卵場所を見定めているのではないだろうか。
(Henk)
参考 蝶図鑑 コムラサキ

