科捜研の女 渡り蝶の秘密(7)教授のうそ
科捜研の所長がスタッフ全員を集める。
「宮内あすかさんの移植手術後のブログ、ちょっと引っかかる事があって調べていたんだがね。手書きのメッセージで、こう書かれていたんだ。」
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「これまで支えて下さったみなさんへ」
「今日 無事に退院の日を迎えることができました」
そして、メッセージの最後の部分にあるあすかさんの署名。筆跡がマーキングのものと同一人物じゃない気がしたんだよね。
「この蝶あすかさんが飛ばした蝶とは違うね。」と所長。
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「マーキングの筆跡が教授の字と一致しました。」
教授は 当時フィールドワークのために度々 種子島を訪れていた。
その際に定宿にしていた民宿の主人照屋江美子を聴取するとついに告白する。
「研究機関に嘘の報告をしました」
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(回想シーン)
「島で見つけたって言えばいいのね?」
「うん。 恩に着るよ。」
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「蝶が無事に海を越えたと信じたあすかさんは自信を持って移植手術に臨み病気を克服した。嘘も方便 病は気からってね。私は悪い事をしたとは思ってない。でも あの人言い出しっぺのくせに…。」
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(回想シーン)
「やっぱり 自白しようと思う。6年前の罪の事。」(教授)
「罪だの 自白だの 大げさだねえ。」(照屋江美子)
「大げさじゃないよ。偽の飛行データ提供しちゃったんだから。ごめんね アサギマダラのみんな。僕 昆虫学者を名乗る資格ないよね。」
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教授の6年前の罪とは、あすかが飛ばせたアサギマダラが、民宿の女主人の手で見つけられたことにしたことだった。あすかが書いたマーキングと同じ文字を自分の手で書いて、それを宿の主人が見つけたことにしてもらった。つまり思い病に立ち向かおうとするあすかに勇気を与えるためについた「善意のうそ」だった。
照屋江美子さんによれば教授は 10月2日から6日まで種子島でフィールドワークを行っていた。
ということは、福岡の事件は5日だからアリバイ成立となる。
でも 教授が現金強奪と無関係だったとしたら…。事件直後に届いた寄付金は一体 誰が…。
「その事ですがこのバッグからヒナヒルギの片鱗が出ています」
「ヒナヒルギは 島嶼部でもごく限られた地域にしか生息しない植物です。群生が確認されている場所は…。沖縄県名護市照喜名だけです。」
「そこは、平良圭介の出身地です。」
「まさか あのバッグを病室に持っていったのは、平良圭介だったのか!沖縄の不良グループのリーダーが京都で闘病する女の子のために現金輸送車を襲ったというのか?で、その事実を花森教授に知られて…。口止めを企てた?。」
筋書きとしては成り立たなくもないが、そうなると、若い2人の接点が見つからない事には…。
平良圭介は京都に住んでいたことはない。資料によれば平良の母親は那覇市の会社員で米兵の子を身ごもって彼を産んだ。しかし 3年後に病気で他界。平良は 親戚の間をたらい回しにされて育ち、度々大人たちから暴力を受けていた事がわかっている。中学も途中で行かなくなり14歳でバジリスクに加わって以来ずっと夜の街で生きてきた。
宮内あすかさんは 生まれも育ちも京都だ。 小学6年でヴィーラント症候群を発症。その後はほぼ入院生活だったらしい。
そんな二人に面識があったとは到底思えない。
このバッグには、もう一つ微細証拠が付着していた。 アサギマダラの鱗粉だ。その事を花森教授に伝えた時、教授は何かに気づいた様子で、こう言っていた。
「昆虫にはいつも真実を教えられる。」
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「全く別の世界で生きてきたあすかさんと平良圭介。2人を結びつけたのはもしかしたら…。」
その時マリコは、ようやく真実にたどり着ける予感がした。
~つづく~