今年もまたツマキチョウ
直近の3年で何だか恒例のようになっているが、今年もまた懲りもせずツマキチョウを飼育することとなった。これまでは1頭ずつ(1個の卵から)の飼育だったが、今年は偶然にも数個の卵が入手できたので同時期に採ったモンシロチョウの卵と一緒に飼育することにした。しかし、一口に飼育といっても、今年は飼育箱には入れず部屋の中でのオープン飼育、つまり4月初めから我が家そのものが飼育箱代わりとなった。リビングのテーブルの上に多摩川から採って来た菜の花をそのまま3つ4つの瓶に活けて、そこで育てることにしたのだ。時々、新鮮な菜の花を多摩川から採って来て補充するだけ。
なお、昨年飼育分はこの4月初めに無事羽化したばかり(参照記事:「ツマキチョウ羽化」)。モンシロチョウなどが1年に何回も世代交代をするのと違い、ツマキチョウは1年に1回だけ発生する。つまり、1年間の殆どを蛹で過ごすのだ。
最初のうちは、モンシロチョウがいくつ、ツマキチョウがいくつと数えていたが、毎日見るたびに場所を変えるので、途中でその数が分からなくなってしまった。さらに、補充した菜の花に図らずも新たな卵か小さな幼虫が付いていたようで、気が付くといずれも10頭を超えていた。菜の花にはこの2種類以外にも蛾の幼虫もたくさんいたし、また別のボトル(一番手前)はヤナギの枝でコムラサキの幼虫も育っているという雑居状態だった。当然のこと、テーブルの上は散った菜の花の花びらやら虫の糞がポロポロこぼれている。毎日掃除が大変、だが徐々に大きくなる糞を見ているだけで着実に育っていることが分かる。モンシロチョウは成長が速い(蛾はもっと速いことも分かった)く、既に蛹になっているものもいる。ツマキチョウはそれに比べると食が細く、なかなか大きくならない。
モンシロチョウ蛹 ↓
ツマキチョウ幼虫 ↓
そこで、途中でモンシロチョウとツマキチョウを分けて、モンシロチョウだけは飼育箱にいれキャベツで育てることにした。しかし、ある日気が付くと、知らぬ間に部屋の中をモンシロチョウが飛んでいる。孫娘が目敏く見つけ「チョウチョが飛んでるよ。」と。飼育箱に入れる前にどこかで蛹になったものがいて、羽化までしてしまったようだ。どこで蛹になったものか探しては見たが、結局蛹の殻は見つからなかった(笑)。
テーブルの上はツマキチョウだけにしてその後しばらく様子を見ていたが、そのうちの1頭が蛹化しそうな雰囲気になってきたのでそれだけを小さな枝と一緒に飼育箱に移すと、間もなくその天井で前蛹になり、さらに1日後には蛹となった。何度見ても、ツマキチョウの蛹のこの奇妙な尖った三日月のような、木の棘のような形には感心する。一体何に擬態しているのだろうか。菜の花にできた実の細い鞘に細さだけは似ていなくもないが、だからと言って翌年春までは持たない1年草の菜の花の茎を利用するわけもない。ともかく、筆者自身はこの奇妙な蛹を自然界ではまだ見たことがないので何とも言えない。蛹になったばかりはまだ緑色をしているが、そのうち全体黒褐色に変わってきて、確かに木の棘のように見えることだけは確か。
しかし、それからが問題だった。こうして1頭ごとに飼育箱に入れていては、飼育箱が来年春までその1頭に占有されてしまうのでどうしたらいいか悩んだ末、終齢幼虫を観察していて蛹化が近いと思われる(この判断が難しいが)ものから順番に同じ飼育箱に移すことにして、ぎりぎりまでテーブルの上の菜の花で育てることにした。葉の部分は殆どなくなったが、それでも種になったところを喜んで食べている。むしろその方が栄養価が高いのかもしれない。
その見極めは容易ではないが、これなら飼育箱の数を増やさなくても済む。上の写真でも蛹化間近なのが6頭いる。ということで、最終的に今年は8頭が同じ飼育箱で蛹となった。その中の1つ、最後に蛹になったものは先輩の蛹の上でお構いなしに重なって蛹になっている。羽化の時、問題はないだろうか。ともかく、全て蛹になったので、飼育箱は例年通り北側のベランダに出した。
今年の飼育で、一つ問題があった。それは飼育箱に入れようと思いながら入れるのが遅れたため、1~2頭(?)がそのまま行方不明になってしまったこと。実際もっといたかもしれない。おそらく菜の花から離れ、蛹になる場所を探して脱走したようだ。モンシロチョウも2頭そんなのが出てきたが、こちらは蛹化後1-2週間もすればチョウになるし、実際無事羽化して飛んでくれたので問題はなかった。しかし、ツマキチョウの場合は来年の春、場合によってはさらに翌年の春でないと羽化しないものもあるので(2-3年の休眠蛹というものがある)、それまでどこにいるか分らないということだ。あちこち探し回ったが未だ見つかっていない。思いもよらないどこか部屋の片隅で蛹になって来年以降こちらが忘れた頃の羽化を待っているのだろう。死にさえしてなければ、来年・再来年の春に部屋を飛んでいることを想像すると、それもまたよし、である。
今は、すべての幼虫がいなくなったのでテーブルの上にもう虫の糞だけはなくなった。
(Henk)
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