羽音が耳に残るオオムラサキ

この日は遠出して行った甲斐があった。今年で山梨のこの場所を訪れるのは6年目になるが、これまでで一番たくさんのオオムラサキが見られた。道を歩いていて、向こうから飛んでくるオオムラサキがそのまま私の側をかすめてバサバサという風を切る羽音を残して飛び去る。それは初めての年にも経験し感動したことだが、それを思い出した。アゲハ類のように音もなく軽やかに、ではない。さすが国蝶の貫録だ、実に重量感と圧倒的な迫力がある。

それから、今回は図らずもオオムラサキの意外な側面を見ることができた。というのは、山道の脇の草むらを低く数頭のオオムラサキが飛んでいるので、珍しいことだと思い近づいていくと、その先には想像もしていなかった異様な光景が広がっていた。頭上には木々が茂り少し薄暗い草むらに鹿と思われる動物の死骸が転がっていて、その周りにはざっと見ただけで20ー30頭ほどのオオムラサキが群れている。その他に数え切れぬほどのシデムシの仲間やハネカクシの仲間、さらに金属光沢に輝くキンバエなどの常連たちが纏わりついている。それらは人間が近づいても一向に飛び立たない。皆食事に余念がないといったところだ。
オオムラサキは本来は樹液に群がることが多いのだろうが、動物の死骸もある意味では彼らにとっての貴重な御馳走に違いない。そんなオオムラサキの姿を撮るには何とも形容しようのない腐臭を我慢せねばならず、時々一瞬だけ翅を開く瞬間を狙って息を詰めてカメラを構え続ける。息が詰まるとはまさにこのことだ。殆どの時間は翅をたたんで裏側の薄黄色の面を見せているだけで、20分程その場で粘ったが、全開を逃した半開きの写真が多く、残念ながらここではいい写真はあまり撮れなかった(また背景が背景だけに)。しかし、このオオムラサキの大群を目にして、なぜか不思議な満足感を味わった。死んだ若い鹿に感謝!

(Henk)

参考 蝶図鑑 オオムラサキ

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